2022年1月9日

総選挙の結果と参院選への展望ー憲法を生かした国づくりをポジティブに押し出す

投稿者: hi_sakamoto

2021年12月13日、憲法共同センター第8回総会の際に行われた記念講演〜「総選挙後の情勢と今後の展望」と題する石川康宏(神戸女学院大学教授)さんの講演が動画になっていたのでメモ書き的に紹介します。

野党共闘は効果があったのか? なぜ共闘勢力は政権交代を果たせなかったのか?来たる参院選をどのようにたたかえば良いのか?という方は、ぜひ動画をご覧ください(1時間の講演)。

総選挙の結果について・・・市民と野党の共闘のたたかいが大きく発展する中で迎えた総選挙だったが、支配勢力の危機感から菅を切り捨て、総裁選報道垂れ流しでメディアジャックし、そして執拗な野党共闘攻撃、特に共産党への猜疑心を煽る反共攻撃を強めたことで、これが一定の効果を発揮し野党共闘の前進に急速なブレーキをかけたと解説されています。マスコミの議席予想もまちまちで、予測がほとんど当たらなかったことから今回の選挙がいかに流動的で予測できなかったのかを著しています。特に選挙の最終盤の変化が大きかったのです。野党共闘へ最初は期待していた有権者も最終盤に立憲民主・日本共産党の共闘、政権運営は大丈夫かといった不安から投票行動が抑制され(投票率が戦後3番目に低い結果に)、またそうした人たちの中の一定数が「野党的に振る舞う」日本維新の会へ流れてしまったという面があったわけです。

参院選挙は6月が公示ですから、正月明けたらあと4ヶ月しかないわけで、2021年総選挙のように一本化がギリギリなったのでは戦えません。ただちに野党が合意してたたかうという体制を作らなければならないと強調されています。まったくその通りだと思います。

野党は安保法制廃止など、これまでの共闘で明確な政策的合意があるのであり、そのことを強調していく必要があります。特に岸田政権になって軍事大国化への姿勢が著しく、「敵基地攻撃能力」などという先制攻撃を平気で口にし、防衛費はついに6兆円を超えてさらにNATOなみにGDP2%にしようなどというけしからん主張が自民党から普通に発せられる有様です。アメリカも中国も、実際には台湾をめぐって競争はするが戦争はしない、したたかに経済的・政治的利権をどう守り広げるかという点からの落とし所を探っている時なのに、日本はとにかく軍事的対応一辺倒という姿勢です。軍事国家づくりのためなら、理由は台湾危機でも朝鮮半島危機でも使えるものはなんでも使ってやろうのです。北東アジア、東アジア情勢のリアルな分析のもとで、どのように日本が役割を果たすのか、そのなかで実利をどう勝ち取っていくのかという主体的で、したたかな判断能力がない。だから、日米共同演習にただ付き従うだけ、米軍戦闘機が青森で燃料タンク2本を落としてもなにも抗議しないし調査しようともしない。「地位協定の見直しを」という自治体や住民の切実な声もまともに受け付けず、まるで属国のような対応しかしないのです。

石川さんは、安全保障環境が厳しいというならそれをいかに和らげるかが政治家に問われている。しかし日本政府は何にも策を持っていない。これが弱点だと強調されます。

中国が怖いから日本に米軍にいてもらいたいーと何となくそう考える向きもありますが、以前から米軍自身が「日本を守る意思はない」と言っているのです。日本の防衛幹部(久間氏=故人など)も在日米軍基地は日本を守ろうとしていないと明確に言っているのです。

こうした情勢で、今こそ「戦争しない」という日本国憲法9条を力にした、平和外交が必要な時です。

しかし、憲法に基づいて積極的な外交アプローチをしようとする際、「憲法を守る」というフレーズがだけではインパクトが弱い、いやそれどころか、「古い」と受け止められることが多いのです。多くの国民が現在の暮らしの良くしてほしい=「現状を変えなければならない」という思っている時に、憲法を守る=変えようとしない=いまの生活はそのまま、という捉え方をされやすいのです。だから、「平和憲法を守ろう」という訴えが、それを主張する私たちの思いとは逆に「古く保守的な考え」としてうけとられてしまう傾向にあるのです。

石川さんは、憲法の掲げている平和主義、人権尊重、生存権などを徹底的に追求したら、この日本がどのように変わるのか、生活が豊かになるのか、という話をもっともっとしていかないとダメだと強調されています。

石川さんは、憲法の文言・スローガンをいくら訴えてもだめで、希望をもって捉えてもらえるようなイメージの押し出しが大事だと強調されます。

一例として、デンマークの話をされました。最低賃金が時給1800円、子どもの最賃は1200円。労働者は3時半〜4時に仕事を終えて帰宅する。医療制度も保険制度ではこぼれ落ちる人が生まれるので税金で全て保障するし、教育は大学まですべて無料。

日本だって、本当は日本国憲法の定めている教育権を本気で追求すれば、大学学費無償化などができるのです。おなじ資本主義で、日本よりもGDPが小さい国でもそれが可能になのですから。

岸田政権は「新しい資本主義」だと言っていますが、中身は安倍・菅政治の継承です。「新自由主義に問題があると言っていますが、本気で変える気はまったく無しです。安上がりの労働者を増やす政策にメスは入れないし、高額所得者への課税(金融所得課税の増税)もやらない。とにかく選挙で勝てば良いということでそう言っているだけだったのです。

このような政権を早期に終わらせて、1日も早い政権交代を実現しなければなりません。そのためには、きたるこの夏の参院選で野党共闘での勝利を積み上げて、さらに日本共産党の勝利・躍進を実現させなければなりません。